長らくお付き合いしている難病についてお話することは、未だよく知られていない病だけに勇気がいることでしたが、
情報を必要とされている方々に届くことを心から願い、
また、お一人でもが多くの方が知ることによって研究や治療法が発展することを祈りつつ、
私自身の体験を少しずつnoteにてオープンにすることにしました。
「誰でも、もしかしたら明日、なる可能性があるのですから、それはきっと社会の役に立つと思います!」
入院中、お世話になった看護師さんの言葉も後押しになりました。
私を支えてくださる皆様に感謝を込めて、少しずつ書き溜めたものを繋げて、宛名のないお手紙を書きました。
note:「脳脊髄液減少症と舞台と」https://note.com/tomatoes_8/n/n1acde1647735
病気に関する説明や詳細はnoteをご覧いただくことにいたしまして、
演奏活動に関わる部分など一部をこちらに記載させていただきます。
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– お話を始める前に
2月にLigeti: Mysteries of the Macabre(川瀬賢太郎マエストロ指揮・神奈川フィルハーモニー管弦楽団)を聴きにきてくださった皆様、関係者の皆様に深く御礼申し上げます。また、出演することが叶わなかった19日のコンサートでは、関係する皆様にご心配とご迷惑をお掛けしましたことを心よりお詫び申し上げます。主催である東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団様からは、大変温かいご対応と深いご配慮いただきました。病名や症状について「脳脊髄液減少症(漏出症)による症状の悪化により」とご説明できれば良かったのかもしれませんが、病気への一般的な理解が進んでいないこと、また個人的な情報ですので、今回は病名など事情を公表しないことにし、「体調不良」ということで発表していただきました。しかしながら、その後、故意に病気に関わる情報を流出させた方がいらしたため驚き、戸惑いました。ただ、そのことにより翌日から始まったMacabreの稽古では譜面から炙り絵のように読み解けるものがあり、作品の世界へもう一段引き摺り込まれてゆくこととなりました。共演者の皆様の温かいお支えと途轍もない力の中に加えていただき、22日の本番は生きた心地のしないような何か、音の表現者の髄に襲われるような時間となりました。
この作品はアンチオペラのアンチ、ということですが、実演の機会をいただく度に作品から秘密のメモを預かる気がします。これについては近しい友にだけ、こっそり話するに留めたいと思います。いずれにいたしましても、多様性に基づく人権が尊重される昨今において、プライバシーに関する情報を公開するか否かの選択は本人によるものであること、いかなる理由があろうとも、どのような状況や立場の方にも例外はなく、侵害されてはならない権利であることを関係各所にて確認いたしました。人それぞれの事情というものは、想像することは出来ても決してし切れるものではないこと、どんな状況下にある者も工夫を重ねることによって社会参加が可能となるようルールが存在しているのだなぁと。
今回、難病の有る無しに関わらず、古くからの友人や”音”を通して交流してきた方々とそれらを難なく共有できたことで、先人達の「より良い未来に」という願い、築いた礎の上に幸運な人生を歩ませていただいたことをあらためて実感し、只々感謝の念が湧きました。これからも固定観念に対してニュートラルでいることに努めたいと思います。また、刻々と変化する世情の中でも本質を見据えている方々との繋がりを大切にし、物事の”ご縁”の行末に興味をもちつつ生きられたらと思います。
ー中略ー
– 人間の世界は光だらけ〜羞明
2月の公演後、状態は一層悪化してゆきました。”生命維持機能が落ちていく感じってこういうことなのかなぁ” と、肉体はてんやわんやだったと思うのですが、不思議と思考は静かに働いている感じでした。
5月には九州での本番もあるのだから、そこに向かって早く動けるようにならなくては・・・ということで半年待たずに9回目のブラッド・パッチを受けました。ー中略ー
横臥療養が明けても暫くは空を見上げることができませんでしたが、だんだんと羞明症状も改善してゆきました。サングラスを通してではありますが、夕方の月、星、雲を見られたときの心は、とても静寂なものでした。
“状況に応じて、淡々とまた工夫をすれば良いんだな” と。
– 音は生まれては消えてゆくものでしたネ
今はひたすらに、九州交響楽団の皆様と一緒に音を奏でられるよう、本番に向けて調整をしています。私を支えてくださる方々のお力と、歩みと、澄み切った心を大切にいただいて、ただ音のことに専念しようと思います。秋にも幾つか演奏の機会をいただいていますので、そこまで最善を尽くします。そして、舞台で演奏する仕事については一段落とし、今後の”音”との関わり方について模索する心づもりです。私にとって”音”は、花火のようにその時々を彩っては消えていくもの。消える際の色の変化や、音のない”間” に心惹かれるのは、「音楽」が生まれる前の根源的な世界への憧憬でしょうか。寡黙な歌い手のままで “いつの間にか消える” が一番でしたが、このような流れとなりました。区切りとなりますので、まずはひとえに感謝を申し上げたいと思います。
改善点が見出せないような、納得できる演奏をしたことは一度もありませんが、およそ30年となる舞台経験の中には、体調面の工夫も含めてやりきったと思えるかけがえのない舞台がありました。
舞台で歌うことで収入を得るなんて全く想像もしていなかったことですが、ひと時、音の命を共有してくださった方が一人でもいらしたとしたら、私のようなものに関わってくれた方々への恩返しになるのかな、と思います。
– 還元・変幻
ろくな恩返しもせずに一段落とは鶴に怒られそうですが、2019年の「松風」公演後、仕舞いの時を見極めていたところでもありました。
人にお世話になる身ですのに恐縮ですが、実は、若い頃から心のままにやりたいことは直接的に人のお役に立てる仕事・医療福祉関係のお仕事で、縁が繋がり5年前に声のクリニックの設立に至りました。運営や声の研究、アドバイザーなど務めてきましたが、更なる勉強を含めこれらは変わらず継続いたします。発信のための作業は、光る画面との格闘になってしまうので、今後はスタッフが代筆(代打?)という形でも協力してくれることになりました。不定期更新となりますが、今後ともどうぞよろしくお願いたします。
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R.Vaughan Williamsについては、こちらに文章を書きました。
ご覧いただけましたら幸いです↓
「声のクリニック赤坂」として監修及び取材協力させていただきました、NHK「チコちゃんに叱られる!」が放送となります。
2019年12月13日(金)19:57- NHK総合
2019年12月14日(土)08:15- NHK総合
「声のクリニック赤坂」を取材していただきました。
TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」
2019年11月13日(水)11:00-13:00放送
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